適度な日光浴

ビタミンDを活性化させる

ここ最近、がんの予防効果や感染症などの病気予防に注目が集まっているものに「ビタミンD」があります。きっかけとなったのは、1980年代に発表された「紫外線をよく浴びる地域では、大腸がんの死亡率が少ない」という研究報告です。

ビタミンD とは、青魚やキノコ類などに多く含まれるビタミンです。名前はビタミンですが、実際はホルモンのような働きをもつ物質で、紫外線を浴びることで人の体内でも合成されます。そのため、紫外線を多く浴びる地域ではビタミンD の合成が盛んで、それががん死亡率低下に関係しているのではないかと推論されたわけです。

その後、ビタミンDに関するさまざまな研究が重ねられ、アメリカの国立がん研究所(NCI)の1万7000人を対象にした調査では、ビタミンDの血中濃度が高い人は、低い人に比べて大腸がんの死亡率が75%低下すると報告しています。

他の研究でも乳がん、卵巣がん、前立腺がん、食道がんなど、多くのがんで、ビタミンDにより死亡率が下がるというデータがあります。近年、日本では、女性を中心にビタミンDが不足している人が増えている、という指摘があります。

これは紫外線がシミ・シワといった皮膚の老化を引き起こすことが知られるようになり、日光を避ける風潮が強まっていることも一因です。しかし、がん予防という点からすれば、必要なビタミンDを生成するために、過度な日焼けは別にして、適度に日光に当たることは有用といえます。

日光に当たるといっても日焼けをするほど長時間、紫外線に当たる必要はまったくありません。国立環境研究所では、ビタミンDの必要量を体内生成できる日光浴の時間を、地域や季節ごとに算出しています。たとえば関東地方( つくば市) では、賂外線の強い夏場は朝や夕方に5分ほど、紫外線が弱まる冬場は日の高い時間に20分程度日光に当たれば、必要なビタミンDをつくることができます。

日光に当たる場所も、手や脚、腕など一部の皮膚で大丈夫です。またビタミンDは一度生成されると、一定期間は体内に蓄積されますので、毎日ではなく、天気のいい日にウォーキングや散歩などをして少し長めに日光に当たるように心がけるのもよさそうです。

仕事などで日光に当たる時間がとれない人や、ビタミンD の合成が少なくなる高齢者では、ビタミンDのサプリメントを利用する方法もあります。
ビタミンDにはがん予防の他にも風邪や胃腸炎などの感染症を予防する効果もあり、免疫力を上げる漢方薬として有名な補中益気湯などと併用するとより一層、感染症予防ができますので、風邪をひいたり、胃腸炎になって休むという無駄な時間を回避することができ非常に有用だと思います。

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